寺田晴美さん (富山県下新川郡入善町吉原)
株式会社Staygoldてらだファーム
寺田さんが農業を始めたきっかけを教えてください。
私が農業を始めたのは、今から9年ぐらい前です。両親が高齢になってきたし、放ってはおけないので大嫌いだった農業を手伝いはじめました。
え、大嫌いだったのですか。しかし今はファームの代表にまでなられました。
そうですね。そこで、何とかして農業を好きになろうと、野菜ソムリエの資格をとりました。その頃は富山では資格をとれなくて、大阪まで行っていました。その資格を持ったことで、野菜や農業に対して興味がわいて、今に至る…。好きなことは出来るタイプですね(笑)
野菜ソムリエでいらっしゃるのですね!
野菜に興味を持つと、次は美味しく食べることをすごく考えるようになって、自分が食べたい野菜を作るようになったし、料理にも興味がわいてきたんです。
噂の『さといもコロッケ』が誕生したのはソムリエ以降なんですね!
家ではサトイモも作っていました。サトイモは〝B品″比率がすごく高い。〝秀品″という素晴らしい形のは極僅かなのです。B品だと値段がガクンと下がり、一体、何の為に作っているんだろうと思っていました。色や形が悪いという理由で、捨てられるんです。それは農家としては当たり前。でも勿体ないですよね。しかも、ガシラ(親芋)なんて可哀想なんです。捨てらるだけですから。そこで、野菜ソムリエとしては、何とかして食べられんかなーと。捨てられるガシラとB品をミックスして、コロッケにしたのが6年昔のことです。サトイモ嫌いの娘にも食べさせたいと思い付きました。そしたら、美味しい美味しいと食べてくれました!
その頃はまだ商品化はしてないんですね。
サトイモの季節になったら作っているプライベートコロッケだったのです(笑)。そこである時、サトイモ出荷組合で、商品化を提案したところ「え~・・」と、渋い反応で聞き流されていました。そんな時に、3年ぐらい前の農業祭で「ね、晴美さん、前に言っとったコロッケっていうやつを、農業祭で売ってみてくれんけ?」と言われて、試作品を食べてもらったら、とても好評。それで「みな穂のさといもコロッケ」として売り出すことになったんです!
すごいですね!それでコロッケは売れたのですか?
最初は売れるかどうか解りませんから、とりあえず祭りの2日間分として200個作りました。すると1日目の11時頃に200個完売して、2日目も200個売れました。その冬に、とうとうコロッケの販売が決まりました!結局その冬は3000個のコロッケが売れました。それでJAさんで商品化しようとなりましたけれど、私一人じゃ厳しいので、コロッケをつくるグループを作ることになったのです。そこで、若手の女性農業士に声をかけて、集まってくれた人たちと『百笑一喜』を結成しました。昨年10月の農業祭に商品を販売したところ、2日間で600個の見込みが、初日の午前中には売り切れ。みんなで「スゴイね、どんだけうれるん??」とびっくり。そうこうするうちに、いろんなイベントへの出店や学校給食に出したいなど、多方面から声がかかるようになってきて「じゃあすごくいっぱい作らんなんよね!」と。スケジュール帳がシフトやら在庫やらでもう大変でしたよ。
てんやわんやですか?
サトイモは寒くなると腐るので、その前に作っておかなきゃいけないのです。素人だしシステムが出来ていないので、在庫管理が大変でした。1月末頃は農協の冷凍庫がコロッケで満杯で崩れそうになって、スミマセンといいながらじゃんじゃんコロッケを積み上げていきました。不安になるくらいの量でしたね。ホントに売れるのだろうかと。最終的に15000個つくったんです!
スゴイ!
当初、農協さんと「売上目標50万円にしよう」と言ってましたが、「50万なんて、とっくの昔に超えたよねぇ!私たちすごいよね!」と仲間と資料つくりながら話してたところです(笑)
お客さんのコロッケへの反応はいかがですか?
1個120円と決して安くない値段だけど全部手作り。その価値をわかってくれるお客さんは「ぜんぜん高くないよ。家では面倒で作られんもん。」と言って下さいます。町外のイベントでも連日買いに来て下さる方や、リピーターの方が宣伝してくれて、そういうのが本当にありがたいです。
グループはどんな風ですか。
今メンバーは7人います。私の様な農家の娘や、お嫁さんです。今までは、農家だけど何かしたい、でも何をすどうすれば良いのか解らないと。でも、この出来事をきっかけに充実した冬になったと言われたのがとても嬉しいです。
女子力が爆発してますね!
コロッケづくりは、時給でお金になります。私たち農業者にとって、6次化というものを実践したいい事例だったと思うし、雇用も生み出せる、消費者の皆さんにも喜んでもらえました。ステップアップ出来たと実感しています。前は、どこにアイデアを投げかけても何も手を差し伸べてもらえない時期があって。やっと時代が私に追いついてきた(笑)。でも、本当にサトイモは割りあわないって思うほど、厳しい選定ですからね。入善町は里芋1億円産地事業でやっていますが、実際はサトイモ農家も減っている現状もあります。
寺田ファームさんでは、プチヴェールの栽培もされていますね。
育苗ハウスの有効活用と冬場の出荷用にプチベールを栽培しています。プチヴェールは大きな葉と葉の間の〝芽″を採ります。大きな葉っぱの部分は一番栄養価が高くて、ペースト状を冷凍にして売れないかなと提案してみましたが、ちょっと難しいと。そこで業者さんに頼んで乾燥粉末にして、今のプチヴェール粉末青汁になりました。私はペーストも捨て難いと思っていて「プチヴェールグリーンカレー」をイベントや、あいさい広場のランチの日にお出ししています。
女子力で、農業×観光のコラボもやってみたいです!
農家って、それこそ捨てるのが当たり前。出荷する時は構っていられません。でも「それを商品化しないでどうするが?やっと実入りが少ないのに、捨てるなんてことしたらどうすんがいね!」という気持ちでやっています。農家だから思い浮かべられる商品があるので、農家目線と消費者視線でそれを大切に、特別にしたいと思います。私は両親のやっている農業も認めるしそれが基盤です。でも私にしかできないことをやってみたい。私ができる農業をやっていきたいし、自慢できる商品をつくりたいと思っています。ぜひ観光とコラボしたいと思います。
最後になりますが、寺田さんのキレイの秘訣を教えてください~(^_-)-☆
新鮮なものを食べる。入善ではそれが出来ますよ。旬のものを体に取り入れることが一番です。野菜を取りにくい方は、スムージーにするとかね。あとはストレスをためない暮らし。仕事を頑張ったらおいしいものやアルコール除菌です(笑)農業のイメージは汚い、しんどい、割りが合わない。こんな仕事は絶対したくない。でもやると決めたので、かっこわるいわ~と言われたくないと思いました。輝き続ける=ステイゴールドという言葉が私の心の中にずっとある大事な言葉です。これからの季節は、泣きなくなるほどしんどい毎日が続きますが、日々乗り越えるんです。でもいいですよ農業って!
サトイモコロッケは、作り手の思いやこだわりが詰まった一品でした。大嫌いだったという農業を、大好きな仕事に変えるために頑張ってきた寺田さんとお会いすると、知らず知らずにニコニコ笑顔になってしまいます!寺田さんのファームでは農業を一緒に楽しんでくれる従業員を募集中だそうです!これからも美味しい野菜づくり、そして隈なく味わう商品づくりに期待です!
Tel &Fax 0765-72-3753